Googleのアルゴリズム・アップデートの変遷を振り返る

今年も残すところあと2日となりました。
今回のコラムでは、Googleのアルゴリズム・アップデートの背景にある歴史的な背景を確認します。それぞれでどのような改変が行われたのかを見極め、今後の戦略立案に役立てましょう。

Googleアルゴリズム・アップデートの変遷

2000年のサービス開始以来、Googleは数々のアルゴリズム・アップデートを行ってきました。その中でも、2011年のパンダアップデート、2012年のペンギンアップデート、そして2017年のメディカルヘルスアップデートは多くの注目を集めました。

アップデートは、よりユーザーの体験に寄り添うために行われています。潜在的に有害なサイトや、視認性やユーザビリティが悪いサイトが検索結果の上位に表示されると、人々に有益な結果を与えることが難しくなります。そのため、人々に最大限の価値をもたらすサイトがリストの最初に表示されるよう、常にアップデートが行われています。

2010年以前のアルゴリズム・アップデート

サービス開始以来、2010年までには下記14項目のアルゴリズム・アップデートが実施されました。これらのコアアップデートの他にも、日々小さなアップデートが行われています。

・2000年9月  (グーグル検索サービスがスタート)
・2003年2月  ボストンアップデート
・2003年4月  カサンドラアップデート
・2003年5月  ドミニクアップデート
・2003年6月  エスメラルダアップデート
・2003年7月  フリッツアップデート
・2003年11月 フロリダアップデート
・2004年1月  オースティンアップデート
・2004年2月  ブランデーアップデート
・2005年1月  ノーフォローアップデート
・2005年6月  パーソナライズド検索開始
・2005年10月 グーグルローカル導入
・2005年12月 ビッグダディアップデート
・2007年5月  ユニバーサル検索導入
・2009年2月  カノニカルタグアップデート
・2009年12月 パーソナライズドサーチアップデート
・2010年6月  カフェインアップデート
2011年以降は、下記のアルゴリズム・アップデートが実施されました。簡単な概要を添えてご紹介します。

2011年 パンダアップデート

2011年2月、エンジニアのBiswanath Panda氏にちなんで名付けられたパンダ・アップデートは、ウェブサイト評価の「白か黒か」の思想にヒントを得て、コンテンツの質によるウェブサイトの評価を大きく転換させました。

具体的には、低品質なサイトの評価が下がり、高品質でユーザーにとって有益なコンテンツが高い評価を受けるようになったのです。低品質なサイトとは、下記のような特徴を持つサイトを指します。

●無断で他サイトのコンテンツを複製しているWebサイト
●コンテンツを自動で生成しているWebサイト
●不適切な広告を設置しているWebサイト

このアップデートは、価値の低いWebサイトがあると潜在的な閲覧者が離れてしまうため、Googleのユーザー数の減少を防ぐために行われたと考えられています。

2011年 フレッシュネス・アップデート

2011年11月、Googleは「フレッシュネス・アップデート」を実施し、検索結果により最新の情報を含めるようにしました。このアップデートは、全ウェブサイトの約35%に影響を与えたと推定されています。

ただし、フレッシュネス・アップデートは、Googleによって「最新情報が求められている」と判断されたキーワードのみに対して実施され、その他のキーワードには影響がありませんでした。「最新情報が求められている」と判断されたキーワードは下記のような特徴を持っています。

●最新の出来事や注目のトピック
 選挙やニュースなど、情報の鮮度が重要なトピック
●定期的に発生するイベント
 ハロウィンやクリスマスなどといった季節のイベントなど、定期的に繰り返し発生するイベントに関するトピック
●繰り返し更新される情報
 テレビの視聴率や市場規模など、不定期ではあるが鮮度が重要と判断されるトピック

2012年 ペンギンアップデート

2012年4月に実施されたペンギンアップデートは、外部リンクを焦点としたものでした。このアップデートは、パンダアップデート以来、Googleの2回目の「白か黒か」を決めるアップデートであることから、「ペンギン」と呼ばれるようになりました。

以前は、外部リンクの量がウェブサイトの信頼度と見なされていたため、この性質を利用して、外部リンクを購入してリンク数を増やしたり、多数のサイトを作って外部リンクを集めたりするサイトが激増しました。その結果、ユーザーにとって何の意味もないサイトが上位に表示されるようになってしまったのです。

そこで、Googleは外部リンクが貼られているだけでユーザーにとって意味のないページの順位を下げるペンギンアップデートを実施しました。このアップデートにより、Googleはユーザーにとって重要性の高いサイトのランキングを上げるよう試みたのです。

この初回アップデート以降、計6回のアップデートが行われ、さらに、2016年9月の7回目のアップデートでは、常に自動アップデートできるように見直されました。

2012年 パイレーツアップデート

2012年8月に実施されたパイレーツアップデートは、違法なコンテンツを大量に含むウェブページが検索エンジンの上位に表示されないようにするものです。名前の由来はそのままパイレーツ(著作権)から来ています。

デジタルミレニアム法案(DMCA)に従い、法律に違反する内容のウェブページの掲載順位を落とし、正当な内容のウェブページの掲載順を高くしました。これにより、違法なサイトが重要なキーワードで上位を占めることを回避することができるようになったのです。

2012年 イグザクトマッチドメイン・アップデート

2012年9月に実施されたイグザクトマッチドメイン・アップデートは、特定のキーワードをそのままドメインに使用しているドメインの評価を下げるために実施されました。例えば、キーワードが「shampoo」で、対応するドメインが「shampoo.com」だった場合、そのドメインの評価は下げられます。

このアップデートが行われるまでは、完全一致ドメインはSEO対策に有効であると考えられていましたし、実際にそのような現象が発生していました。しかし、このアップデートにより、完全一致ドメインであることだけでは、上位表示を確保することはできなくなりました。

ただし、このアップデートの対象はあくまで「キーワードをそのままドメインに使用している低品質のウェブサイト」であり、ユーザーの利便性を第一に考えている高品質なサイトには、このアップデートは適用されません。

2013年 ペイデイローンアップデート

2013年6月に実施されたペイデイローンアップデートは、「金融系やポルノ系、ギャンブル系のキーワードにおいて、上位表示のためにスパムなどを多用していたサイトの評価を下げる」目的で実施されました。
「Payday Loan」(即日ローン)というフレーズにちなんで名付けられましたが、これはGoogleが公表した正式な名称ではありません。

ペイデイローンアップデートは、悪質な検索エンジン最適化手法で検索上位を狙うウェブサイトのランクを下げようとするもので、金融系やポルノ系、ギャンブル系の特定のキーワードに重点を置いています。基本的に、通常のキーワードを使用し、健全な運営がなされているウェブサイトは影響を受けません。

2013年 ハミングバードアップデート

2013年9月に実施されたハミングバードアップデートは、会話型の検索に対して、適切で関連性の高いコンテンツを上位表示させるアップデートです。
例えば、「日本で一番高い山は?」といった会話形式の検索に対して、富士山に関する情報が上位表示されるようになりました。

ハミングバードが導入される前は、会話形式の検索には対応できておらず、「日本で一番高い山は?」という質問に対して、「高い」と「山」を認識するだけでした。そのため、必要な検索結果ではなく、的外れな結果を表示することも稀ではありませんでした。
しかし、ハミングバード導入以降は会話型への認識精度が向上し、検索意図に沿った検索結果を表示できるようになっています。

2014年 ベニスアップデート

2014年12月に実施されたベニスアップデートにより、ユーザーの所在地に合わせた検索結果が表示されるようになりました。
ユーザーが東京で「カフェ」と検索した場合、検索結果には「東京のカフェ情報」が主に表示されますが、同じユーザーが大阪で「カフェ」と検索した場合、検索結果には「大阪のカフェ情報」が主に表示されます。

その他、美容サロンやスーパーマーケット、レストラン、歯医者、税理士事務所なども同様に、ユーザーの所在地に合わせた検索結果が表示されます。
ベニスアップデートの導入前は、これらの単語は、個別の単語としてかなりの検索数がありましたが、ベニスアップデート以降は地域によって検索数が左右されるようになり、場所によっては表示件数が大きく減少しています。

2015年 ドアウェイアップデート

2015年3月に実施されたドアウェイアップデートは、特定のサイトに誘導する(Door Way)ために、単に検索エンジンのランキングを上げる目的で作成されたコンテンツの評価を低下させようとするものです。

そのようなページの例としては、ユーザーが、指定されたサイトを指すハイパーリンクを持つ取るに足らない内容の複数のウェブログに誘導されるタイプや、言及された地域を除けばほとんど区誘導を目的として作成されたウェブサイトは、中身のないコンテンツもしくは乏しいコンテンツでありユーザーへの有益性がないことから、ランキング調整の対象となっています。

2015年 モバイルフレンドリーアップデート

スマートフォンの利用傾向の高まりを受け、Googleは2015年4月にモバイルフレンドリーアップデートを実施しました。これは、「スマートフォンでの視認性、操作性の高いサイトの評価を上げる」ためのアップデートです。
Googleでは、モバイルフレンドリーなウェブサイトとして、下記の要素を挙げています。

●タップやズームなどをしなくてもテキストが読みやすい
●タップターゲット(タップできるエリア)の間隔が適切
●再生できないコンテンツが含まれていない
●横方向へのスクロールが発生しない

Googleは、世界中のあらゆる言語のモバイル端末の検索結果に影響を与えると明記しています。さらに、2016年5月には「モバイルフレンドリーアップデート」を強化し、モバイルフレンドリーの重要性を強調しています。

2017年 日本語検索アップデート

2017年2月、Googleは日本語のウェブサイトに特化した異例のアップデート「日本語検索アップデート」を導入しました。これは、2016年末に発覚したキュレーションメディアのコピーコンテンツ上位表示問題に対応したものと考えられます。
上位表示されていたキュレーションメディアのコンテンツには信憑性がなく、それが医療コンテンツであったため、検索ユーザーにより深刻な悪影響を及ぼす事態に発展し、早急な対応策の導入が急務であったという背景があります。

このことを受け、Googleは「日本語検索アップデート」を実施。異例となるこの対応を機に、コンテンツの正確性や独自性がより求められるようになりました。

2017年 フレッドアップデート

正式な発表はなかったものの、2017年3月に注目すべきアップデートが行われ、今では「フレッドアップデート」と呼ばれる有名なものになっています。

この調整の詳細は曖昧なままです。変更内容についても特に言及されていないため、変更内容も不明ですが、特に以下のようなサイトに大きな影響があったことが分かっています。

●過度に広告掲載しているページを有するウェブサイト
●正確性が乏しいウェブサイト
●独自コンテンツがないウェブサイト
●低品質なウェブサイト

なお、「フレッド・アップデート」という名称は、Googleのスタッフが「Googleが宣言しない日々の小さな変化をフレッド・アップデートと呼ぼう」と言ったことに由来しており、一般的な意見とは異なり、これには何の意図もなかったとされています。

2017年 アウルアップデート

2017年4月に実施されたアウルアップデートは、「フェイクニュースでの混乱を回避」するためのアップデートです。Google社内でこのプロジェクトのことを「アウルプロジェクト」と呼んでいたことに由来すると言われています。
アウルアップデートでは、下記のことが実施されました。

●「検索品質評価者ガイドライン」改訂
●アルゴリズムの再調整
●フィードバックのためのツール導入

このアップデート導入により、不適切で標準以下のコンテンツを持つウェブサイトの検索順位は下落。よりユーザーに価値のある情報を提供する、といった基本的な対応の徹底を求められるようになりました。

2017年 医療健康アップデート

2017年12月に「医療や健康関係の情報の精査」を目的に医療健康アップデートが実施されました。このアップデートでは、医療・健康関連について医療従事者、医療機関、専門家が与える信頼性の高い情報を提供しているウェブサイトの評価を高めています。

このアップデートは、医療や健康に関する検索で、医学的根拠のない情報が上位にランクインしている問題を受けて、日本でのみ導入されたものです。
同年2月に実施された日本語検索アップデート導入と同様の背景があり、日本語検索アップデートはこの医療健康アップデートの導入を視野に入れ実施されたものと考えられます。

Googleは、医療・健康以外にも、お金やライフスタイルなど生き死にに関わるキーワードを含むYMYL(Your Money Your Life)の分野でも、同様の改良を目指すことを明らかにしています。Googleは、人生を左右する重大なトピックに関する信頼性の向上を図っています。

2018年 スピードアップデート

2018年7月、モバイルページの表示速度の速さによってウェブサイトのランキングに影響を与える新たなアップデート「スピードアップデート」が実施されました。これにより、モバイルページの表示速度もランキングを決定する要素に追加されました。

ページスピードは訪問者の満足度に影響を与えるだけでなく、2017年のGoogleの調査プロジェクトでは、ページの読み込みが3秒以上続くと、なんと53%もの訪問者がすぐにサイトを離れてしまうことが判明しています。一方、ウェブページの読み込み速度を3秒以内にできれば、全体としての評価も上がると考えられています。

2019年 BERTアップデート

2019年10月に、AIを用いて「キーワードに対するニュアンス理解の精度を高める」ためのBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)アップデートが英語圏で実施されました。同年12月には日本語を含む70言語以上でアップデートを実施したことが発表されています。

2013年に実施されたハミングバードアップデートの進化版とも捉えられる内容で、キーワードの文脈を理解できるようになったことにより、より関連性の高い検索結果が表示できるようになっています。

例えば、「2019 brazil traveler to usa need a visa(2019年にブラジルからアメリカに旅行する場合はビザが必要)」という検索において、アップデート以前は「ブラジルに旅行するアメリカ国民」に関する情報を表示される、といったような誤った解釈(この例では行き先が逆)も散見されましたが、BERTアップデート以降は安定して正確な解釈がなされています。

2021年 ページエクスペリエンス・アップデート

2021年6月に実施されたページエクスペリエンスアップデートは、「コンテンツの内容以外のユーザー体験」に関するアップデートです。このアップデートは2021年6月から2ヵ月かけて実施されました。

ページエクスペリエンスアップデートでは、コアウェブバイタル(LCP・FID・CLS)の採用が主なアップデート内容となっており、操作性や視認性など、コンテンツ内で得られる情報の価値以外に関する体験が重視されるようになっています。
情報の価値以外の体験とは、下記のようなものです。

●モバイルフレンドリー
●LCP(ページの読み込み時間)
●FID(インタラクティブ性=ブラウザの反応速度)
●CLS(視覚的安全性=レイアウトの意図せぬズレがないか)
●HTTPS
●煩わしいインタースティシャルがない

ただし、コアウェブバイタルの追加によるランキングへの影響は限定的で、Googleはその理由として下記のように述べています。

ページ エクスペリエンスの構成要素はすべて重要ですが、ランキングでは、ページ エクスペリエンスの一部の要素が平均以下であっても、総合的に優れた情報を含むページが優先されます。

優れたページ エクスペリエンスが関連性の高い優れたコンテンツに勝ることはありません。しかし、同様のコンテンツを含むページが複数ある場合は、ページ エクスペリエンスが検索ランキングで非常に重要になります。

引用元:より快適なウェブの実現に向けたページ エクスペリエンスの評価

2021年 スパムアップデート

2021年6月に実施されたスパムアップデートは、スパムサイトへの対策を強化するアップデートで、2週間で2回のアップデートを実施することが公式Twitterで表明されています。
これらのアップデートは、主に下記のような、ユーザーのニーズに即していないウェブサイトに適用されます。

●自動で生成されたコンテンツ
●オリジナルコンテンツがない、もしくはほとんどない
●対ユーザーと、対検索エンジンで異なるコンテンツまたはURLを表示する
●不正なリダイレクトの設置
●リンクプログラムへの参加

スパムアップデートにより、こうしたサイトは検索結果の上位に表示されなくなっています。
なお、さらなるスパム行為の助長を回避するため、、スパムアップデートの詳細は公開されていません。

2022年 コア・アップデート

2022年5月に実施された広範囲なコア・アップデートは、半年前の2021年11月のコア・アップデートに続き、今年最初のアップデートです。
Googleでは、今回のように告知を行う広範囲なコアアップデートをブロードコアアップデート(broad core update)と呼んでいます。告知を行わない小規模なコアアップデートは頻繁に行われています。

検索結果の関連性と品質に全般的に関わる一連のアルゴリズムの更新がコアアップデートです。
2022年は5月、月、月と合計3回のブロードコアアップデートが実施されました。

2022年 ヘルプフル・コンテンツ・アップデート

Googleは、ヘルプフル・コンテンツ・アップデートと名付けられた新しい検索アルゴリズムのアップデートを実施しました。

“Helpful “とは、 “有利な “あるいは “有益な “という意味です。

ヘルプフル・コンテンツ・アップデートでは、人間が人間の目的のために制作したファーストハンドで機能的なコンテンツが高く評価されます。
逆に、検索エンジンのために(検索エンジンからの訪問者を獲得するために)作られたコンテンツは評価されません。

Helpful Content Updateの目的を、Google は次のように述べています。

Helpful Content Update は満足いく経験ができたと訪問者が感じるコンテンツに、より大きな見返りを与えることを目指しています。一方で、訪問者の期待を満たさないコンテンツは同じようには良い結果を出せないでしょう。

このように、Helpful Content Update の導入は高品質コンテンツを検索ユーザーに届けるという取り組みの一環です。

まとめ

これまで数多くのアップデートが行われてきていますが、Googleが軸としているのは「ユーザーファースト」です。私たちは、常にユーザーのことを第一に考え、優れたコンテンツと使いやすい機能を提供するサイトを心がけなければなりません。

ユーザーエクスペリエンスを最高レベルに保つためには、サイトの品質基準を満たすよう継続的に改善する必要があります。そうすれば、後で大幅な変更が必要になることはありません。

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