ECサイトの運営責任者になる人に必須の5つのスキルとは

ECサイトもリアル店舗も「お店」である以上、商品を仕入れて売ることは同じです。しかし、リアル店舗を管理運営した経験があっても、すぐにECサイトの運営責任者を務めることは簡単ではありません。それは、ECサイトを運営するには、すぐに次の5つのスキルが必要になるからです。

スキル1:ECサイト向け商品の企画
スキル2:サイトの構築とシステムの構築
スキル3:営業、PR、広告
スキル4:受注、在庫管理、出荷の流れをスムーズにする
スキル5:アフターサービス

どの業務も新しく、覚えることは膨大ですが、ECサイト運営責任者は「司令塔」なので、まずは広く薄く知識を身につけてから、それぞれのスキルを深掘りすればよいのです。
そして、ECサイトの業務を一通りつかむことができれば、あとはリアル店舗を管理運営してきた経験を活かすことができるので、仕事は軌道に乗るはずです。

まずは全体の流れをつかむ

5つのスキルを1つずつ解説する前に、なぜ「新人ECサイト運営責任者」は、何を置いてもまず全体の流れをつかむ必要があるのか説明します。

社長や上司から、「ECサイト運営責任者をやってくれないか」と依頼される社員は、ビジネス経験が豊富なはずです。それは社長や上司は、ECサイトを会社の事業の柱にしたいと考えているからです。
ECが軌道に乗ってもリアル店舗を手放すつもりがない会社は、次のステップとして、ECとリアル店舗の融合を構想しているはずです。ECも新規業態の1つですが、ECとリアル店舗の融合は、さらに大きな新規事業になります。

では社長や上司はなぜ、EC経験がない社員に、ECサイトの責任者を任せるのでしょうか。それは、EC経験がある人が少ないからです。ECに精通した人材はどの業界でも引く手あまたなので、これからECに取り組む企業は、優秀な人材を確保できない可能性があります。
それならば、自社のビジネスを知っているベテラン社員にECスキルを獲得させて、責任者に就かせたほうが合理的です。

そして、ECサイトはそもそも、小売ビジネスを簡略化するための仕組みです。
つまり、小売経験がない人がリアル店舗を管理運営するより、リアル店舗の経験が豊富な人がECサイトを運営するほうが、ハードルが低いのです。
小売ビジネスの経験がある程度あれば、EC経験がなくても、努力次第でECサイトをスタートさせることができます。

企業のECサイトをサポートしてくれる業者も存在するので、ECサイト運営責任者は、全体を見渡して、全体に指示を出す司令塔に徹し、まずは全体の流れをつかんだほうがよいわけです。

スキル1:ECサイト向け商品の企画

ECサイト運営責任者に求められるスキルその1は、ECサイト向け商品の企画です。
リアル店舗での売れ筋商品をそのままECサイトに掲載して売れるほど、ECは単純ではありません。
リアル店舗の客は、試着や試食、肌触りの確認、サイズや色や鮮度のチェックができます。しかも、店員が客とコミュニケーションを取ることができます。
リアル店舗での売れ筋商品は、こうしたサポートがあるからこそ、客から支持されてきたのです。

しかしECには、そのようなサポートはありません。客は、スマホやパソコン画面を見ることしかできません。その状態で客を魅了するには、商品企画が重要になります。
ECの客は、とても移り気で飽きやすい性質を持っています。そのため商品企画は、客がファーストコンタクトの3秒で印象に残る内容にしなければなりません。

ECサイトに合わせて商品ラインナップを考えるのではなく、商品企画を固めたうえで、ECサイトのデザインやコンテンツを検討していくのが理想です。

スキル2:サイトの構築とシステムの構築

ECサイトが、これまでの小売りと決定的に異なる点は、システムがすべてのベースになっていることです。

リアル店舗による小売ビジネスは、店舗や店員がすべてのベースになっていました。カタログ販売なら、カタログがビジネスの生命線でした。それと同じように、ECにとってのサイトやシステムは、ベースであり生命線です。

ECサイトを「構築するだけ」なら、月額数千円で始めることができます。そうではなく、本格的なECサイトをつくるのであれば、初期投資も月額料金も高額になります。
ECサイト運営責任者は、試験的に低料金システムから始めるのか、それとも最初から多額の予算を投じてECサイトをつくり込んでいくのか、決めなければなりません。

ECサイト運営責任者は、システム会社などが提供しているシステムやECプラットフォームについて調べ、各社の特徴を把握して、予算を確保しなければなりません。
予算を確保するには社長や上司の承諾を得なければなりません。ECサイト運営責任者は、調べたシステムやECプラットフォームのメリット・デメリットを、社長と上司にプレゼンすることになります。そのとき、自分の考えもまとめておく必要があります。

新人ECサイト運営責任者がシステムやECプラットフォームのメリット・デメリットを探るために、実際に自分でシステム会社の担当者と会って、パフォーマンスやコストについて取材することになります。

スキル3:営業、PR、広告

ECサイトの営業スタイル、PRスタイル、広告スタイルは、リアル店舗のそれとは異なります。
ECサイトに客を呼ぶには、知名度が必要です。

リアル店舗だけでやってきた小売企業がECに進出する場合、リアル店舗の客はまだECの存在を知りません。また、ECのメリットは、全国の消費者を顧客にできることですが、日本中に散らばっている潜在顧客たちは、できたばかりのECサイトの存在を知りません。

ECサイト運営責任者は、SNSを活用した営業・PR・広告を考える必要があります。SNSなら拡散効果が得られるだけでなく、SNSからそのままECサイトに飛んでもらえます。
また、メディアに露出するとECサイトの知名度を一気に高めることができるので、テレビCMや雑誌とのタイアップ企画、プレスリリースの発行などを検討することになります。

スキル4:受注、在庫管理、出荷の流れをスムーズにする

企業がECを始めたものの、なかなか軌道に乗せることができない要因の1つに、受注、在庫管理、出荷の流れの不具合があります。

消費者はなぜ、店員がサービスしてくれるリアル店舗ではなく、ECサイトを選ぶのでしょうか。それは、買い物が簡単だからです。ECでの買い物を簡単にしているのは、注文から商品の受け取りまで(EC企業から見ると、受注から出荷まで)のスムーズな流れです。客に「クリック3回で商品が届いた」という経験をさせられることが重要です。

客は、商品の発注から商品の受け取りまでの流れがスムーズであることを当然のことと思っています。それで、受注、在庫管理、出荷に少しでも不具合が生じると、ECの客はすぐに離脱してしまいます。

ここで注意したいのは、ECの客は、例え品質のよい製品を割安で買えることがわかっても、商品の発注や商品の受け取りにストレスを感じたら簡単にキャンセルする、ということです。
なぜならECの客は、他社のECサイトなら、品質がよくて安い製品をストレスなく買えることを知っているからです。
ECビジネスでは、商品の品質や価格だけでなく、受注、在庫管理、出荷でも「致命傷」になりかねません。

ECサイト運営責任者は、システムやプラットフォームを選択するときに、サービス提供業者が、受注、在庫管理、出荷までケアしてくれるのか確認してください。
受注、在庫管理、出荷までシステム化できないと、EC導入のもう1つの成果である省力化や人件費の抑制といったメリットを享受できません。

スキル5:アフターサービス

成功しているEC企業は、アフターサービスやアフターフォローが充実しています。
例えばECサイトにリコメンド機能を搭載すれば、一度購入した客に「あのECサイトには、いつも自分がほしいものが売っている」と思ってもらえるかもしれません。

アフターサービスを充実するには、顧客管理や購入履歴分析といったマーケティング手法を利用するとよいでしょう。顧客管理も購入履歴分析も、システムで処理してしまいましょう。

ECの導入当初は、売上がそれほど伸びないかもしれないので、顧客管理や購入履歴分析にコストをかけたくないと思うかもしれません。しかし、システムを導入して作業の自動化を進めておかないと、リピート客をつくれず機会損失を招くことになりかねません。

ECの客は、一度でも快適な買い物体験をすると、継続して同じECサイトを使いたいと思います。顧客のその思いが「熱いうちに」アフターサービスを仕掛けていきましょう。
そうしないと、他社のECサイトで快適な買い物体験をして、そちらに流れていってしまいます。

まとめ~「ECは難しくない」と言い聞かせてみる

初めてECサイト運営責任者を任される人は、緊張するはずです。ECビジネスを知らない人は、ECはブラックボックスのなかに入っているように感じます。そして、ブラックボックスを開けてみると、難解なものばかりが入っています。
しかし、システムや作業や仕組みを1つひとつじっくり観察すれば、それぞれが単純な構造になっていることがわかります。だからこそ、多くの企業がECにトライすることができているのです。
新人ECサイト運営責任者は「ECは難しくない」と自分に言い聞かせて、必要なスキルを1つひとつ身につけていってください。

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