ECサイトの売上アップにつながる鉄則と施策

ECサイトを立ち上げたのに、売上アップにつながっていない企業は、次の2点を確認してみてください。

◉ECビジネスの鉄則を守っているか
◉ECを軌道にのせるための施策を行っているか

ECビジネスの運営と売上アップをつなぐ、3つの鉄則と、3つの施策を紹介します。

なぜ鉄則と施策の両方が必要なのか

それまでEC(ネット通販事業)をしていなかった企業がECに乗り出せば、本来は売上が上がるはずです。なぜなら、販路が確実に1つ増えるからです。しかもECという販路は今、多くの企業が多くの成功事例を積み上げています。ネット通販でモノを買いたいと考えている消費者も一定数存在します。

もしECを始めたのに売上アップが果たせていなかったら、鉄則を守っていないか、必要な施策を実施していないか、もしくはその両方です。
鉄則と施策は、似たような概念ですが、ここでは次のように使いわけます。

鉄則:経営者やEC担当者が持っておきたい心構えや志や方針
施策:売上低迷に悩む企業が実際に取り組むべき作業

EC鉄則1:コンセプトを固める

リアル店舗の売れ筋商品とECでの売れ筋商品は、驚くほど異なることがあります。そのため、リアル店舗と同じ商品ラインナップをECで展開しても「売れない」ことは珍しくありません。

ECを始めるとき、コンセプトを1つだけつくってください。
例えば、衣料販売の会社なら、アウターだけに絞ったり、30代独身女性だけに絞ったりしましょう。商品の種類を絞ってもいいですし、顧客層を絞ってもよいのですが、とにかく「1つ」にこだわってください。

そして1つのコンセプトは、できるだけ概念を狭めてください。
食品販売であれば、例えば「野菜のECを構築する」というコンセプトは広すぎます。「日本であまり売られていないヨーロッパ野菜」ぐらい狭めたほうがよいでしょう。

なぜECにコンセプトが求められ、なぜ狭い1つの概念に絞ったほうがよいのでしょうか。
それは「なんでもある」コンセプトは、アマゾンと楽天というメガECが存在するからです。また、ユニクロやZOZOといった大手ですら、衣料品という1つのコンセプトに絞っています。
一般企業が「複数コンセプト」や「広い1つのコンセプト」を掲げたら、こうした大手とバッティングしてしまいます。
そこで一般企業のECは「狭い1つのコンセプト」が良いわけです。

そしてECのコンセプトは、楽しくしましょう。
ECの消費者は、ECサイトをコンテンツのように楽しむ「癖」がついていますので、それに応えられるとよいでしょう。

EC鉄則2:ゴールを1つに決める

ECで売上アップを目指すなら、売上高だけをゴールにして、他の目標をゴールにしないようにしましょう。
「売上も知名度も好感度もブランド力も満足度も」とゴールを複数設けるとコンセプトがブレてしまい、せっかく見込み客に閲覧してもらっても、すぐに離脱されてしまいます。

ゴールは、経営者が決めたほうがよいでしょう。そして経営者は、ゴールを1つ決めた以上、EC担当者にその他の目標を課さないようにしてください。

例えば、売上アップをゴールに据えて、ECサイトの改良に取り組み、見事売上が順調に伸び始めたとします。このとき、アンケート調査を行ったら「商品が全体的に安っぽい」という意見が多く寄せられた、とします。

経営者は、EC担当者に「ECサイトをリニューアルしたらブランドイメージが低下したではないか、どうなっているんだ」と指摘しないほうがよいでしょう。
EC担当者は、ブランドイメージが多少傷ついても、売上アップを達成できるECサイトをつくろう、と考えながらサイトを改良したかもしれないからです。

ECではゴールはとても重要視されています。キー・ゴール・インディケーター(KGI)という考え方があって、これはゴールを数値化する取り組みです。
しかし、ECに取り組んだばかりの企業が、複数のゴールを同時に達成することは困難です。
ゴールを複数にしたり、途中からゴールが変わったりすると、ECサイトだけでなく、EC戦略全体がまとまりのないものになってしまいます。
「特徴のないEC」は、移り気なネット消費者に簡単に飽きられてしまいます。

EC鉄則3:訪問者数、購入率、客単価を意識する

ECの売上高を上げるには、訪問者数または購入率または客単価を高めるか、そのすべてを高める必要があります。
ECに慣れていない経営者やEC担当者は「それだけのことか」と思いうかもしれませんが、その油断が落とし穴になることがあります。

ECビジネスに本格的に携わったことがない人は、ECを「便利な買い物手法」ととらえてしまいます。そのイメージは間違ってはいないのですが、ECはそれだけではありません。

ECを「便利な買い物手法」とのみ理解していると、リアル店舗でそこそこ売れている商品が、なぜECサイトで売れないのかという「隘路(あいろ)」に迷い込んでしまうでしょう。

リアル店舗からECに進出する企業は、ECでも訪問者数、購入率、客単価を高めることを目指さなければなりません。
リアル店舗で成功した企業は、リアル店舗の訪問者数や購入率や客単価を高める工夫を重ねてきたはずです。それと同量の取り組みを、ECビジネスでも積み重ねていく必要があります。

ECは、リアル店舗ビジネスの延長でできるものではありません。例えば訪問者数だけを考えてみても、リアル店舗の客を増やす方法と、ECサイトの閲覧者を増やす方法はまったく違います。

リアル店舗でもECでも「訪問者数×購入率×客単価」が売上高を決めるのは同じですが、訪問者数戦略も購入率戦略も客単価戦略も、リアル店舗とECで変えなければなりません。

EC施策1:操作しやすいサイトにする

ECで売上高を上げられない企業のなかには、「買い物かご」のなかに商品を入れてもらうことができているのに購買につながらない、という悩みを持っているところがあります。

ECサイトの閲覧者が「買い物かご」に商品を入れるということは、商品の魅力や認知度、価格は問題ないはずです。
「買い物かご」に商品を入れっぱなしにしている顧客が多いのは、ECサイトの「最後の一押し」機能が弱いからと推測できます。

ECビジネスは、サイト・ビジネスやシステム・ビジネスの側面があります。
ECサイトのデザイン、操作性、アピール性、そしてシステムの機能がすべて一定レベルに達していないと、売上につながりにくいでしょう。

これはリアル店舗とまったく同じ構造です。
有名商業地にオシャレな建物を建てて、魅力的な商品を並べても、店員に商品知識がないと売れません。
リアル店舗で売上アップを目指すときに、立地場所、内装、商品ラインナップ、店員のおもてなしを、すべて徹底的に磨き上げるはずです。
それと同じ取り組みを、ECでも行なわなければなりません。
「ECサイトが使いにくい」という印象を抱かれたら、閲覧者はあっという間に離脱してしまいます。「操作しやすいから、つい要らないものまで買ってしまう」くらいのECサイトを目指しましょう。そのために高性能なリコメンド機能をECサイトに搭載するのも、有効な対策になるでしょう。

EC施策2:データを重視した改良を続ける

ECの売上が低迷していたら、アクセス解析は欠かせません。ECのよいところは、ビジネスのすべての工程をデータ化できるところです。
アクセス数、購入率、客単価、客の性別、客の年齢、客の住所、キャンペーンの効果、1人当たりの閲覧時間(ページ滞在時間)、ページごとの閲覧率--これらがすべて数値として出てきます。

ECの売上に悩んでいる企業の経営者は、アクセス解析を専門業者に依頼してみたほうがよいかもしれません。
ネット上には無料のアクセス解析ツールがいくつも公開されているので、自社のEC担当者でもそれを使うことはできます。
しかし、数字を知ることと、数字が意味するものを理解することは別物です。
優秀なアクセス解析の専門業者なら、ECサイトが溜めたデータを分析したうえで、コンサルティングをしてくれます。

ビジネスのすべての工程をデータ化できるということは、根拠に基づいた改善策を打ち出すことができる、ということでもあります。

EC施策3:キャンペーンを実施する

リアル店舗で売上が落ちたらバーゲンをするように、ECでもマーケティング・キャンペーンを打ち出しましょう。
例えば、次のようなキャンペーンはすぐに実施できます。

◉プレゼントつきのアンケート調査
◉スマホで受け取れるクーポン券の配布
◉送料無料期間の設定
◉「今だけ」セール
◉サイト・コンテンツの充実

ECはインターネットがベースになっているので、顧客とのコミュニケーションを簡単に深めることができます。
プレゼントを提供したり、送料を無料にしたり、セールを実施したりする施策は、本質的には安さで客を獲得する方法です。しかし、そこにイベント性を加えたり、コンテンツを充実させたりすることで、顧客に金銭的な得以外の得を提供することができます。

工夫次第で、ECはリアル店舗以上に顧客と「接触」することができます。

まとめ|ECも1日にしてならず

ECサイトを立ち上げるとき、大抵の企業は外注します。優れたECサイト構築会社に発注すると、ECビジネスのコンサルティングもしてもらえます。さらにフォローアップとして、アクセス解析をしてくれることもあるでしょう。

ただ、そこまで「面倒見」のよいECサイト構築会社の料金は安くありません。それでつい、経費重視でECサイト構築会社を選んでしまいます。
それでもECサイトは立ち上がるので、ECビジネスを開始することができます。

しかしECのノウハウがない企業が、ECサイトを立ち上げただけで売上が上昇するほど、ECビジネスは甘くありません。
もし、ECの売上が低迷していたら、ECサイトのリニューアルを検討してみてはいかがでしょうか。
リアル店舗をリフォームしたり、好立地の場所に移転させたりするように、ECビジネスでも大規模なテコ入れが必要になります。

リアル店舗の手法をそのままECに導入しても効果が出ないかもしれませんが、リアル店舗を成功に導いた「努力」は、ECでも有効なはずです。

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