コンバージョンを高める「2.6秒ランディングページ」の作り方

企業が開設しているサイトを見た消費者が、そのサイトに掲載されている商品を購入することを「コンバージョン」(conversion、転換)といいます。
コストをかけてサイトをつくっている以上、企業はコンバージョン率を高めたいはずです。

そのためには、消費者が最初に見るサイトのページ「ランディングページ」(landing page)の魅力を高める必要があります。
ランディングページとは「閲覧者が最初に着地するページ」という意味です。

「ランディングページが勝負どころ」であることは、企業のサイトの担当者なら誰でも知っていますが、「2.6秒」で勝負が決まることを意識してランディングページを作っているでしょうか。
3秒以内で閲覧者によい印象を与えるランディングページの作り方を紹介します。

「サイトの第1印象は2.6秒で決まる」(ミズーリ工科大学)

アメリカのミズーリ工科大学の研究によると、ネットユーザーが、初めて見たサイトの印象を形成するのは1秒の10分の1です。
ただ、閲覧者の目が、サイトの最も印象的な部分を探すのにもう少し時間がかかるので、サイトを開いてから印象を形成するには2.6秒かかります(*1)。

サイトのよし悪しが2.6秒で決まってしまうことに、サイトの制作責任者やサイトの運営者は納得がいかないでしょう。
しかし、いくらサイト側の人たちが「もっとしっかり見てほしい」と思っても、ネットユーザーは忙しいので、2.6秒以上かけたくないと思っています。

しかしこの事実は、サイトをつくる人たちに有利に働くかもしれません。
なぜなら、2.6秒で好印象を抱かせるランディングページさえつくってしまえば、わずか2.6秒で自社サイトのファンをつくっていくことができるからです。とても効率的です。
そして、ライバル会社が2.6秒を意識せずにサイトをつくっていれば、差を広げることができます。

*1:https://news.mst.edu/2012/02/eye-tracking_studies_show_firs/

よい印象を持ってもらい、悪い印象を持たないでもらう

コンバージョンを増やすために、閲覧開始から2.6秒を意識したランディングページをつくる、という方針が固まったところで、次はこの2点を考えていきます。

よい印象を持ってもらうようにする
悪い印象を持たせないようにする

この2点は、同じことをいっているように感じるかもしれませんが、ランディングページ制作では、2つの異なる作業になります。

ネット閲覧者は、よい印象を持って、悪い印象を抱かなかったときに、そのサイトにとどまります。
よい印象がなくて、悪い印象しかなかったら、離脱します。これは当然です。
しかし、閲覧者によい印象を抱かせることに成功しても、その直後に悪い印象を持たれてしまったら、やはり離脱してしまうのです。

よい印象を抱かせる工夫は、特定のことを「すること」になります。
悪い印象を抱かせない工夫は、特定のことを「しないこと」になります。
いずれもランディングページをつくるうえで重要なことなので、章をわけて解説します。

LPによい印象を持ってもらうために「すること」

ランディングページは一期一会(いちごいちえ)の精神でつくっていかなければなりません。つまり、ランディングページの制作者は、「この閲覧者が今このページから離脱したら、二度と戻ってくることはない」という覚悟を持つ必要があります。

ランディングページは、初めての訪問者が「こういうコンテンツを探していたんだ」と感じるものでなければなりません。

閲覧者が求める答えが最初にわかるつくりにする

かつて、ランディングページは「じらす」ほどよいとされていました。「じらし」とは、なかなか答えや解決法を紹介しない見せ方です。
「こんなことで困っていませんか」「楽して解決したいですよね」などと散々あおりながら、結論はページの最下段に少し載せるだけ、という構成になっています。

しかし現代のネットユーザーは、じらしているランディングページは結局内容が薄いということを知っています。
ランディングページの最も目立つ場所に、閲覧者が知りたい答えを掲載してしまいましょう。
答えをすぐに知ることができた快感を味わった閲覧者は、「なぜその答えにたどり着くのか」と興味を持つようになります。その興味が、ランディングページを読み込ませる原動力になります。

答えを先に教えたら、すぐに離脱されてしまうのではないか、と心配する必要はありません。答えを知って離脱した閲覧者は、答えをすぐに知ることができて満足しています。悪い印象を持って離脱したわけではないので、次につながる可能性があります。

閲覧者を安心させるエビデンスと権威を盛り込む

答えを教えても、閲覧者が「なぜその答えが正しいと言い切ることができるのか」と疑問を持ったら、はやり離脱につながってしまいます。
それを回避するために、ランディングページでは、答えの次にエビデンスを示すようにしましょう。

例えば、ランディングページで真っ先に「殺菌効果がある」という答えを示したら、その次に「誰が『殺菌効果がある』と断言しているのか」がわかる情報を提供します。

ランディングページの構成のイメージは次のとおりです。

ランディングページの構成のイメージ

閲覧者が知りたい答え

答えのエビデンス
(なぜその答えが「正」と言えるのかを説明する)

その他の情報
詳細な解説など

サイトのレイアウト(構成)は、情報量が多くなると縦長になります。
閲覧者はサイトの上から下へと目線を動かしていくので、「答え→エビデンス→その他の情報」の順に構成していきます。

よいコピー

閲覧者に2.6秒でよい印象を持ってもらうランディングページにするには、よいコピーは欠かせません。
コピーについては、実績のあるコピーライターに依頼したほうがよいでしょう。
優秀なコピーライターは、常に消費者目線を持ち続けています。そのため、ランディングページを初めて見る人の気持ちになって言葉を探します。

よいデザイン【見映え編】

よいコピーと同じくらい、ランディングページのデザインをよくする工夫は重要です。
ランディングページのデザインでは、見映えと使いやすさの2つがポイントになります。

ランディングページの見映えのデザインでは、コンバージョンにマッチしたものにする必要があります。シックな服を買ってもらいたいのであれば、ランディングページもシックなデザインにします。安さで閲覧者を引きつけたいのであれば、ド派手なデザインが適しているかもしれません。
ランディングページの制作責任者は、デザイナーとよく相談しながらつくり込んでいくことになります。

よいデザイン【使い勝手編】

ランディングページの使いやすさのデザインは、「潜在顧客の心理」と「サイト内の動線」を意識してつくっていくことになります。
ランディングページの初見者の心理は、コンバージョンする(「購入する」をクリックする)までに何度も変化します。
例えば、次のとおりです。

「そうそう!こういう製品がほしかったんだ」
 ⬇
「値段はいくらなのかな。どこをクリックすれば、料金表が出てくるのかな」
 ⬇
「かなり高額だな。だけど品質が問題なければ買おうかな」
 ⬇
「他社の類似製品をチェックしてから、買うかどうか決めようかな」
 ⬇
「カードのポイントは使えるのかな」

このような心理変化を想定したら、値段の表示、品質の解説、他社製品との比較、カードのポイントの利用方法を、閲覧者に確実に知らせるデザインを構築していきます。

オリジナルの写真や動画

ランディングページでは写真や動画を多用します。
そのとき、自社オリジナルの写真や動画を使うと、閲覧者によい印象を与えられます。
さらに、高画質や動画編集にもこだわってください。
写真や動画の質は、かけたコストに比例する部分があるので、ランディングページの制作責任者は、しっかり予算を確保できるようにしてください。

LPに悪い印象を抱かせないために「しないこと」

先ほど、「じらす」タイプのランディングページは古くなっている、と紹介しました。
このように、ランディングページにわざわざ盛り込んでしまったばかりに悪い印象を抱かせることがあります。
できることをあえて「しないこと」も、ランディングページづくりでは大切になってきます。

大げさなコピー、凝りすぎたコピー

大げさなコピーや、陳腐な言葉が並んだコピーは避けなければなりません。大げさで陳腐な言葉を見た閲覧者は「またか」と思いながら静かに離脱していくからです。

さらに、言葉遣いを凝りすぎて、難解な文章になることも避けたいところです。
新製品用のランディングページをつくるときに、開発担当者や営業担当者にコピーづくりを任せると、一般消費者を置き去りにした言葉が並んでしまうかもしれません。
よいコピーは、新製品や開発や営業から1歩引いて考えないと生まれてきません。

広告

ランディングページ自体が広告ですので、そこに別の広告を掲載することは極力避けましょう。
例えば、プレミアムバージョンの製品のランディングページをつくるときに、どうしても、従来のスタンダードバージョンの製品の広告を入れたくなります。
そこで妥協して広告を掲載してしまうと、プレミアムバージョン製品のプレミアム感の訴求が弱まってしまいます。

低画質の画像、すぐに「無料」とわかる写真

ランディングページには写真やイラストや動画などの画が必要ですが、低画質の画像や無料で入手できる写真を使うと、チープな印象を持たれてしまいます。

また、エビデンスを示すときに、グラフをランディングページに掲載することがありますが、そのグラフはきちんとデザイナーに発注したほうがよいでしょう。
エクセルでグラフをつくり、それをJPGやPDFにしてランディングページに載せることもできますが、悪い意味での「手作り感」が出てしまいます。

まとめ~万人受けは考えないで

ランディングページに情報を盛り込みすぎないようにしてください。
先ほど、プレミアムバージョンの製品のランディングページに、従来製品の広告を掲載しないほうがよいとアドバイスしましたが、これは情報を盛り込みすぎない取り組みでもあります。

情報量で注意しなければならないのは、ランディングページの閲覧者の層を想定したら、それ以外の層を狙わない、ということです。
例えばターゲットを「20代の独身女性で上昇志向が強い人」と設定したら、「30代の女性にも理解してもらえる内容にしよう」と考えないほうがよいでしょう。

ランディングページの目的は、コンバージョンを増やすことです。そして、消費者全員のコンバージョンを同時に増やすことは不可能です。
ランディングページで動かせる消費者は限られているので、ターゲットは「20代の独身女性で上昇志向が強い人」ぐらい絞り込んでください。

ランディングページをつくるときは「2.6秒で『なんかこのページ、いいな』と思ってくれた人だけに情報を提供しよう」という気持ちでつくっていくとよいでしょう。
万人受けを狙うことはリスキーです。

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